パコと魔法の絵本

9月は映画強化月間!(勝手に)というわけで、最近やたら映画に行く機会が増えているわけですが、今回東京から一週間だけ帰ってきてる友人と映画を見てまいりました。ポニョもDMCも見ちゃったし、他に何やってるっけ?なんかファンタジーっぽいし、主役の子かわいいし、「パコと魔法の絵本」なんてどう?!ってことになったわけです。

今回はあまり前評判とかも知らないまま、作品について深く調べず、てっきり子供向けのばりばりリリカルで童話的な映画なんだろうな!と予想していったわけですが!あの、広報の仕方間違ってると思います!これ子供が見たら軽くトラウマよー!
とはいうものの、一緒に見た友人は子供が見てもぜんぜんOKだという意見で、単純に私にとってこの監督の作品が、決して悪い意味でなく、苦手なのかもしれません。本当に本当におもしろいんですが、怖い。「嫌われ松子の一生」も二度と見たくない映画のひとつですから・・・。

ある病院を舞台に、傍若無人で酷薄な性格の老人と、ある重い症状を患っている無垢な少女とが触れ合っていく過程を描いたお話です。
こうかくと、「どうせ女の子の無邪気さにほだされて老人が改心するんだろ?」と予想する方が出てくるだろうし、ぶっちゃけそのとおりなんです。全編を通して一つ一つの人間ドラマは非常にベタくさいというか、セオリー通りなんですが、不思議と嫌味がなく、それぞれに胸にせまるものがあります。それは多分、映画全編を通して、人間の生きにくさを切実に描きだそうとしている姿勢によるものだと思います。

基本的に舞台が病院に限定されていて、出てくる場所も病院のロビー・中庭・回廊・病室と固定されています。映画というよりは、なんだか演劇を見ているような箱庭感。ミュージカルもふんだんに使われているので、華やかで非日常的な描写でありながら、描いている物事は麻薬中毒や断絶した親子など、とても現実的で重苦しいもので、きらびやかなハレの世界と、ヘビーな現実が同居している非常にシュールな、狂気と紙一重の空間。個人的にそのすれすれなところを怖いと感じるのかもしれません。

ただ、基本的にはエンターテイメント映画ですし、ミュージカル調のかわいい音楽と映像はもちろん、中盤から展開するCGアニメもとてもすばらしい。どんなに深刻な場面でも必ず五分に一回はギャグがはさまれるので、(好みに合えばだけど)飽きずに最後まで見られるはず!全体的に、涙も笑いもシリアス要素もオタク要素もてんこもりではあるけれど、非常にバランスの良い映画だと思いました。
それぞれの役者さんも非常にすばらしくて、役者というよりは物語の登場人物の一人として、真剣に泣き、笑い、同情し、共感している自分がいました。というかメイクすごすぎて誰が誰だかわからん。土屋アンナのデビル看護婦や、小池栄子のバンパイア妻も良かったけど、個人的には関西弁ヤクザの素っぽいツッコミが好きでした。挫折した過去の天才子役というキャラクターを出しておきながら、主人公に新進子役をもってくるというのは、皮肉なのかなんなのか。ある程度確信犯でやってそうで怖い。

それにしても、冒頭に出てくるサブカル部屋、999とエヴァケロロ軍曹はともかく、トップをねらえは一般人にはわからんと思うぞっ。